亡き師はかく語りき② ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 初来日

 1956年、ウィーン・フィルが初来日しました。

 指揮者は作曲家、ヴィオラ奏者でもあるパウル・ヒンデミット。

 オーケストラは50人ばかりの小編成で、協奏曲では楽団員が独奏を務めました。

 4月9日から27日までに公演総数なんと17回という超ハードスケジュール。

 ( ̄▽ ̄;)


 九州でも18日北九州市八幡製鉄体育館、翌19日福岡朝日会館の2公演が開催されています。 

 来日メンバーにリヒャウト・クローチャックの名前はなく、海外公演に負担があるという理由で前年にバリリ四重奏団を退いており、ウィーン・フィルも同様だったと思われます。

 当時、東京藝術大学4年生の馬場先生は、24日の日比谷公会堂の公演を聴くことができたのです。 

 お目当ては、コンサートマスターのウイリー・ボシュコフスキー、首席奏者のエマニエル・ブラベッツの独奏によるブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲です。

 ブラベッツはクローチャックの後、バリリ四重奏団に所属していましたから、彼らの演奏が馬場先生の心を奮わせ、ウィーンで勉強したいという衝動に駆り立てたことは容易に想像できます。

 当夜の公演はラジオで放送されたそうで、いつかこの録音が日の目を見る…それを願うばかりです


 さて、当時、先生の住まいは国鉄の支線沿いにあり、終演後には本線駅までの電車しかなかったそうです。

 春の宵、心を火照らした馬場省一青年は当夜の印象を反芻しながら、支線線路の上を枕木と砂利を踏み歩いたことでしょう。


 そして、翌57年には2代目ウィーン・ムジクフェライン弦楽四重奏団であるバリリ四重奏団が初来日。

 さらに59年にはカラヤン指揮でウィーン・フィルの再来日。

 馬場先生の心を畳みかけるかのように…。


 なおボシュコフスキーとブラベッツによるブラームスの二重協奏曲の録音はCDで聴くことができます。

 馬場先生はこの録音をさかんに絶賛していました。

 私の愛聴盤の一つ。


2020.12.15初出ですが、2.15の最終回に合わせて掲載日を変更

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