亡き師はかく語りき⑤ 大いなる学友ⅰ

 良き学友に恵まれると、より一層、学びが有意義になるばかりか、一生の友としての付き合いに至ることもあります。 

 「ウィーン・フィルにバルトロメイという首席チェリストがいるだろう?ウィーンでは、バルトロメイと同じクラスだったんだよ。素晴らしい才能で、クローチャック先生は特に可愛がっていた。ヘッドにライオンの頭が彫られている彼のチェロ(テヒラー、1727年作、ローマ)はクローチャック先生から譲り受けたものなんだ。」と馬場先生(下記1番目、2番目の画像残照)。

 フランツ・バルトロメイ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の元チェロ首席奏者です。

 元コンサートマスターだったライナー・キュッヒルとともに私たち世代のウィーン・フィルの顔と言えましょう。

 ウィーン・フィルの演奏会やその動画で、たくさんの独奏を堪能してきました。

 「でもね、才能が素晴らしすぎて、何でもサラッと弾けちゃう。だから音楽が淡白なんだ。同じ首席のヴォルフガング・ヘァツァーの方が自分は好きだな~。」と先生は続けられた。

 なるほど…。

 わかるような気がします。


 ちなみにヘァツァーの独奏はバースタイン指揮、クリスティアン・ツイマーマン独奏によるブラームス、ピアノ協奏曲第2番、第3楽章のかの麗しく切ない主題で聴くことができます。

 2005年、私は北九州音楽祭でバルトロメイによるバッハの無伴奏チェロ組曲を聴くことができました。

 会場は戸畑区の西日本工業倶楽部、旧・松本邸。

 明治45年築の洋館で、国指定重要文化財となっています。

 そのような歴史的な空間で、100人ほどで聴く贅沢な演奏会でした。

 演奏会の雰囲気を知らせる写真の最後列は私です(音楽の友:2006年1月号より)。

 ( ̄▽ ̄;) 

 終演後、私はバルトロメイに “My teacher is the student of Richard Krotschak.” と伝え、馬場先生が出演されたプログラム(先生はそのころ療養中で、このプログラムは最後に出演された演奏会のものです)を見せたのです。

 すると、“I remember him!” と返ってきたのです。

 そして先生との思い出を話してくれたのですが、残念なことに語学ポンの私にはおおざっぱにしか理解できませんでした。

 (;'∀')

 しかしとても嬉しくなりました。

 そのころ、先生は闘病中で、また私も今も続く人生再建の最初の局面にいたのです。

 それゆえに心に良き風が吹き抜けたのは言うまでもなく、その日のうちに迷いを払拭して、ある決意をすることができたのでした。

 バルトロメイ、馬場先生、クローチャック先生、ありがとうございます。


2020.12.24初出ですが、2.15の最終回に合わせて掲載日を変更

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