L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第11番ヘ短調 作品95《セリオーソ》
当夜の幕開けは
L.v.ベートーヴェン
弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 作品95《セリオーソ》
です!
この楽曲で、この室内楽定期演奏会におけるクァルテット・エクセルシオによるベートーヴェン弦楽四重奏曲 全曲演奏が達成されます。
さて、ベートーヴェン作品の個性と言えば、壮大な規模と内容と劇的な感情表現と言われます。
しかし、30代の後半には作風が一変。
先のこうした性格は影を潜め、構成は簡潔となり、内省性を深めていくのです。
この弦楽四重奏曲 第11番《セリオーソ》は、前年作の第10番《ハープ》とともにその典型です。
この傾向は同時期のピアノ・ソナタ《テレーゼ》や《告別》などにも見られ、その後の深遠な性格の後期作品の過渡とされています。
《セリオーソ》は「厳粛な」というタイトル通り、極めて高い緊張感と透明な繊細さが曲全体に貫かれ、そして、凝縮され、楽聖の弦楽四重奏曲の中で演奏時間が最も短いのも特徴です。
曲全体はこげな感じです。
動画とご一緒に!
第1楽章冒頭の強奏は襲いかかる思いもよらぬ難儀。
混沌の渦中に落とされ、「どないなってしまうねん?」と嘆くだけ。
疲弊し、彷徨する第2楽章。出口は見えず、第3楽章に切れ目なく突入。
《セリオーソ》のタイトル由縁となった研ぎ澄まされた音楽。
激しい律動が刻まれ、ムチのように発破をかける。
中間部には安らぎが…。
しかし、それは束の間のオアシス。
そして、終楽章。
はかないメランコリックな音楽。諦めか?
終結部では快活に躍動する音楽に転じますが。
無理に明るく振る舞うようで、どこか虚しい…。
どうでしょう?
3年前、私たちがコロナという未知の脅威に怯えた時のことと重ならないでしょうか?
この曲から数年後、ベートーヴェンには幾多の辛苦が矢継ぎ早に襲いかかるのです。
経済的な困窮、甥の親権を巡る裁判、創作のスランプなどなど。
それを予見しているかのようです。
ところで、この投稿でのエクの画像、近年、頻繁に使っていますが、これは、2019年6月、
直方谷尾美術館室内楽定期演奏会でのショットです。
半年後にはコロナ感染拡大に怯えることになろうとは思いもよらず。
直方谷尾美術館ならではの風景です。
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