#知っておこう!「あのチェンバロは?」
先日開催された第52回定期演奏会におけるハイライトの一つ。
それは、5弦チェロ・ピッコロによる無伴奏チェロ組曲 第6番で生み出された ぴんと張りつめた緊張感、モノクロームの世界の後、鳴り響いた天国的に美しいチェンバロの音。
また、演奏会の休憩時間に人だかりが出来ていたのも印象的だったあのチェンバロ。
かんまーむじーく直方の会報誌「かわら版」ではお馴染みとなった「知っておこう!」ですが、そのスピンオフ企画として、詳細記事をここに掲載いたします。
音だけでなく、見た目も素敵なこのチェンバロの製作者は、中村壮一さん。
現在、佐賀県唐津市に工房を構えておられますが、国立音楽大学でピアノの調律技術を学ばれた後、日本におけるチェンバロとフォルテピアノ製作の第一人者 堀 栄蔵さんの下でご修業をされた方。
また、中村さんはとても優しく、サービス精神も旺盛な方で、調律中にも関わらず、具体的な実演も兼ねながら、色々なことを教えていただきました。
・このチェンバロは1990年に製作したもの
・弦を弾く部分は、1つ1つの材料を手で削り出す等、実に細かくデリケートな作業であること
・弦を弾く爪には、バロック当時と同様、鳥の羽の軸を使用していること
・響板(弦の下にある絵の描かれた木)の厚さは、2.3~5mm程度しかないこと
・この楽器は実に繊細で、温度・湿度の変化には極めて敏感とのこと
・チェンバロは打鍵による音量調節が出来ない代わりに、鍵盤を二段持たせることで音色や音域を変えたり、レバーを操作するだけで、半音変化させたり、音量を変化させたり(弾く弦の本数を操作)する機構がついていること
(チェンバロの構造が気になる方は、こちらのウィキペディアをご参照ください。)
また、この凝った装飾もチェンバロならでは。
・底板に描かれた美しい絵は、あの岡本太郎画伯のお弟子さんの手になるもの
・天使と製作者のイニシャル(SN)が模られたローズ(上の写真真ん中、響板の低音側の手前にギターのように開けられた穴に嵌め込む金属の装飾)も中村さんの手作りの品
そして、楽器を撤去する時のこと。
このように、本体と土台に分けて解体するところまではまだ想定内でしたが、その足をきれいに土台に取りつけるという工夫にはびっくり!
上の写真の真ん中下にある6本の棒がそれですが、足の置き忘れ防止にもなって、一石二鳥だそうです。
狭い出口から出れるよう、このように立てて、移動。
そして、そろりと玄関先に降ろした先に待っているのは、普通のミニバン?!
何と!基本的に運搬はこのミニバンで行っているとのこと。
しかも、その横幅も含め、全てがぴったり収まるという驚愕の事実。
このチェンバロを製作された当時、そこまで計算されて作られたのでしょうか?※
※残念ながら、お聞きすることが出来なかったのですが。。。
このチェンバロを製作された当時は、確かにミニバンが流行り始めた頃。
でも、こんなにぴったり収まるのは、後部座席がフルフラットになる今だからでは?
その当時から、運搬はミニバンで、きれいに収まっていたのでしょうか?
さて、話を変え、番組もナレーションも変えたところで。。。
さぁ、ここまでご紹介してきた 世界に一台しかないこの素晴らしいチェンバロ。
その気になるお値段は?
ジャカ・ジャン!
「とても出来がいいので、いくら出されてもお譲りする訳にはいきません」とのこと。
下世話な話を失礼いたしました。
小林道夫さんや曽根麻矢子さんを始め、九州で開催されるチェンバロやバロック音楽の演奏会で使われる可能性が高いこの楽器。
ということで、またこのチェンバロをどこかで聴ける日を楽しみにしたいと思いますが、ここで今回最後の知っておこう!
このチェンバロかどうかの見分け方はどうすればいいの?
それは上の写真でもわかるとおり、鍵盤の上の方に「SOUICHI NAKAMURA 1990」と書かれているので、一目瞭然、実に簡単。
でも問題は、舞台上に上がって、チェンバロのその部分を確認出来るかどうか。
ステージと客席が異常に近い直方室内楽定期演奏会が当たり前ではないことを、ちゃんと知っておこう!
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