J.シベリウス 弦楽四重奏曲《内なる声》
いよいよカザルス・オマージュの最終夜。
終曲にカザルスと同じ時代を生きた北欧・フィンランドの作曲家、ジャン・シベリウスの弦楽四重奏曲《内なる声》を上演いたします。
その楽曲からご紹介いたしますが、まず、その動画はこちらです。
シベリウスの時代のフィンランドはロシアによる併合と支配に苦しめられ、シベリウスは交響詩《フィンランディア》など、自作曲を通じて、国民に独立の意識を啓発しました。
そのことはスペイン内戦で亡命したカザルスが《鳥の歌》に祖国への想いを託したことと深く通じるものがありましょう。
《内なる声》はシベリウス43歳の作品で、その前年に生死の境から脱却する出来事がありました。
数年前より喉の癌の疑いを抱えていて、その腫瘍の除去手術に成功したのです。
それゆえにこの曲には生を求める人間臭さを感じさせ、先のロシアからの独立の宿望も相まってアグレッシヴな心中の吐露に心奮えます。
さらには創作に新しい境地をもたらす契機となり、より内省性を深め、以降、交響曲第4番をはじめとする傑作群を生み出していったのです。
第1楽章はヴァイオリンとチェロによる自問自答に始まり、続いて襲いかかる難儀に翻弄されます。
対照的に精力的な第2楽章(動画6分42秒~)は、全てが順調で何も怖くない時の回想?それとも焦燥?
第3楽章(9分21秒~)は全曲の柱で、祈りや希望を求める心中が吐露されます。
迷いと決意の第4楽章(20分40秒)。
最終の第5楽章(26分54秒~)では、難儀との壮絶な闘いが描かれ、ギリギリのところで脱却し、終結は「ついに勝ち得たぞ!」と言わんばかりです。
感情の炎がゆっくりと燃焼し、聴く者の心が浄化されます。
大きな難儀との闘いはどなたの人生にもありましょう。
《内なる声》がその体験に共鳴し、生きる勇気を感じていただけましたら幸いです。
個人的な話ですが、癌と闘病していた私の旧友が、昨年7月と9月の演奏会に来場してくれ、当夜も来場予定でした。しかし、残念ながら、昨年11月に逝去。
空の上の彼にも聴いてほしいと願っております。
【参考】#知っておこう ~ シベリウスについて①序章
シベリウスについて、もっと詳しく知りたい方は下記もご覧くださいませ。
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