【案内②】第35回定期演奏会 Ensemble +PLUS
彼の名前は渡辺伸治。
節句人形店を営む還暦間近のオヤヂである。
だがその正体は、クラシック音楽の中でも最もコアと言われる弦楽四重奏を三度の飯や酒と同じほど愛する、いわゆるクァル・オタ(クァルテット・オタクの略)である。
彼を弦楽四重奏に夢中にさせたのは、元・九州交響楽団コンサートマスター&京都市立芸術大学の岸邉百百雄氏である。
かれこれ30年ほど前のこと、渡辺は、岸邉氏が主宰する弦楽四重奏団、福岡モーツァルト・アンサンブルの定期演奏会を聴くやいなや、「そっちの人」になったのだった。
四重奏団と聴衆がともに成長する活動に、渡辺はズッキューンされる。
演奏会は聴衆有志の主催で、福岡市・宗像市・北九州市・佐賀市で開催されていた。
そして渡辺は自身の住む直方市に定期演奏会を立ち上げたのである。
音楽振興。
うう~ん、クァル・オタの「仲間づくり」ではないか?
1994年福岡モーツァルト・アンサンブル解散。
渡辺の心にはポッカリと穴が空く。
そのころ福岡市と下関市に常設の弦楽四重奏団が1団体ずつあったが、渡辺は情熱を傾けられずにいた。
そして翌年には姉が病没、数年後には父親の事業が窮地に追い込まれ、渡辺家の家運は暗い泥沼に沈んでいく。
それでも地域発の弦楽四重奏団の再生を夢見ていたのである。
そして10年ほど経て、人生再建のための最初の長いトンネルを何とか抜け出た渡辺は、クァルテット・エクセルシオと出会うことになる。
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