F.J.ハイドン 弦楽四重奏曲 ト短調 作品20₋3 Hob.Ⅲ:33《太陽四重奏曲第3番》


 第40回室内楽定期演奏会《バロックから私たちの時代の楽曲で祝うベートーヴェン250歳 第8夜》クァルテット・エクセルシオ シリーズ14の1曲目。

F.J.ハイドン 弦楽四重奏曲 ト短調 作品20₋3 Hob.Ⅲ:33《太陽四重奏曲第3番》

 再開の幕は、弦楽四重奏曲史上、最初の一里塚となった秀作を開けます。

 弦楽四重奏曲の創始者はハイドンで、最初の曲集は1760年以前作です。

 夜会を盛り上げる娯楽音楽で始まり、第1ヴァイオリンが主役を務め、他は伴奏に従事するスタイルでした。

 ハイドン20代後半。バッハが亡くなって10年ばかり、神童モーツァルトが幼子のころ、ベートーヴェンが生まれる10年前ほどのことです。

 しかし弦楽器4挺が醸す繊細を極めた響に、彼は芸術作品へ高めようと試みます。

 それがこの曲を含む作品20、そして前年作の作品17、ともに6曲集です。

 特に作品20では、各楽器が対等に会話をする礎を築き、楽曲構成も長足の進歩を遂げ、感情を率直に表現する楽想となったのです。


 さてハイドンと言えば、晴朗・快活。

 しかしこの第3番は、趣が大きく異なります。

 短調の性格を活かし、激情と溢れる甘美な抒情、その対比見事な劇的な楽曲で、作品20の6曲中で最も成熟した仕上がりです。

 ベートーヴェン作品の激情に馴染んでいましたら、「へえ~、そうなの?」と思うかもしれませんが…。


 しかし完成された弦楽四重奏曲の途上にある、ハイドン40歳の歴史的な試行です。

 それを汲みとりながら聴くとこの楽曲が特別に感じられましょう。

 そしてこの劇的な音楽に、コロナ感染が次第に拡大していった時、私たちの心中に生まれた脅威を重ね合わせてみてください。

 曲をもっと身近に感じれるはずです。

第1楽章 感情が疾走していきます。平穏な日常が翻弄されていく様に。

第2楽章 凍てついた心から絞り出される嘆き。

第3楽章 シルクのようなきめ細かな響きが夢想へと誘う。戦士の休息、いや現実逃避でしょうか?

第4楽章 意を決して立ち上がり、そして目の前の闘いに挑んでいきます。揚々と。


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