L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74《ハープ》
第40回室内楽定期演奏会の2曲目。
L.v.ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74《ハープ》
この曲は《運命》、《田園》交響曲の翌年作で、この2大作の兄弟作品でもあります。
そしてこの時期の楽聖の素顔を感じさせる、とても愛おしい作品です。
ベートーヴェンは、30代半ばに《英雄》交響曲や《ラズモフスキー》弦楽四重奏曲をはじめとする革新的な作品を生み出し、規模と内容の壮大さ、激しい感情の表出などに到達しました。
しかしこの時期(中期)の創作頂上を築いた後、作風は一変。
先の傾向は影を潜め、規模・内容はコンパクトで簡潔となり、穏やかな情感や瞑想性を聴かせるようになったのです。
この《ハープ》はその典型。
「大きな苦しみと悲しみを乗り越えられることができた。今ならそれを人に語れる。」と言わんばかりです。
第1楽章 朝:荘重な序奏、続く決然としたさわやかな主部は、夜が明け、一日が始まる光景のようです。そしてタイトルのゆえんのピチカートが眩しさを放ち、柔らかな抒情を歌っていきます。
第2楽章 祈り、瞑想、静かな情熱:このころのベートーヴェンの心中はかくありき。《運命》交響曲の第2楽章と通じる描写です。
第3楽章 嵐:全楽章中、唯一、激情が綴られた、以前の楽聖の残り香です。タ・タ・タ・ターン、《運命》によく似た動機によって、葛藤の嵐が吹き荒れます。しかし終結部分では、それが弱音で奏でられ、熱した感情が次第に冷却され、そして最終楽章へ。
第4楽章 嵐の後:晴れ晴れしい音楽!この感動的な転回は《田園》交響曲と同じで、コロナ終息を待ち望む私たちの心情にピタリではないでしょうか?終始、穏やかな空気に満ちますが、終結部ではやはり劇的に高揚。だけど最後は「えええ?」と沈黙のような静けさで締めるのです。
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