A.シュニトケ チェロとピアノのためのソナタ 第1番

 第33回定期演奏会がいよいよ明後日となりました。

 終曲となる、A.シュニトケ チェロとピアノのためのソナタ 第1番の紹介です。

まず、この曲の初演者であるナタリー・グートマンの動画です。

  日本でこの作曲家の名前が一般までも広く知られるようになったのは、元フィギュア・スケート選手の浅田真央さんによります。

 浅田さんが2010ー11年のショート・プログラムにシュニトケの「タンゴ」を使用されたからです。

 シュニトケは1934年に当時ドイツ・ヴォルガ共和国で生まれたユダヤ系ドイツ人です。

 ソビエト連邦に移住し、モスクワ音楽院と同大学院で学びましたが、西側から押し寄せてきた現代音楽や実験音楽の洗礼を受けます。

 ソ連当局が推奨する伝統音楽には従えず、反体制の前衛芸術家として攻撃されてきたのでした。

 72年作の交響曲第1番は初演後作曲家同盟の演奏禁止にあい、80年には出国禁止になるなどの辛酸をなめてきました。

 89年に定住権を得てハンブルクに移住したのですが、その数年前に脳血管疾患を患い、健康に優れない状況で作曲を続け、97年に帰らぬ人となります。

 シュニトケの作風は芸術音楽と軽音楽の融合が目指され、前衛音楽の語法を使いながらとても聴きやすいです。

 そのため20世紀後半の作曲家としては驚くほど多くの録音が残されています。

 チェロ・ソナタ第1番は78年作。

 その年にソ連の新聞「プラウダ紙(実際は共産党機関紙)」から厳しく批判されたことと関連があるのでしょうか?

 怒り、嘆き、無力感がまざまざ吐露されています。

第1楽章 曲全体のプロローグを成し、チェロの独白が空虚に響きます。

第2楽章 感情が怒涛のような氾濫し、異常な緊迫感をもって高揚。チェロが斬るようなピチカートで断たれた後、砕けるようなピアノが終楽章へと導きます。

第3楽章 チェロが痛切な慟哭を奏で、深い嘆きを延々と吐きます。次第に弱奏となり第1楽章を回想すると諦観が広がり、ピアノが第2楽章の楽句を別物のようにはかなく歌い、曲を閉じます。

 私たちと4作曲家とでは生きている時代や境遇は違いますが、人間の感情や喜怒哀楽は変わらないはずです。

 当夜、彼らの人生、心の叫び、魂に共鳴していただければ幸いです。

 ご来聴くを心よりお待ちしております。

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