J.ブラームス クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114


 バロックから私たちの時代の楽曲で祝うベートーヴェン250歳 10夜のオマージュ「第2夜」はブラームス最晩年の傑作で締めます。

 J.ブラームス  クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114

こちらがその動画です。

 ブラームスは50歳半ばを越えて創作力の急激な衰えを実感し、身辺の整理、つまり終活に取りかかっていました。

 しかしマイニンゲンの宮廷を訪問した際にクラリネットの名手ミュールフェルトと出会い、彼の演奏に大きな感銘を受け、4曲のクラリネット作品に着手するのです。

 彼の音楽性やクラリネットの音色がブラームスの晩年の心境に大きく共鳴し、霊感と創作力を喚起されたのです。

 それだけにこの4曲はクラリネット作品の中では古今の最高峰を成し、ブラームスの最晩年の枯淡の秀作として広く愛聴されています。

  今宵の三重奏曲は4曲中最初に作曲され、チェロとクラリネットの親密な会話が孤独なピアノを抱擁するような見事な書法を聴かせます。

第1楽章

チェロの独白的な主題に始まり、それに続くクラリネットが寂寥感をさらに濃厚。そしてブラームス特有の内面での感情を燃焼させながら、秘めた情熱と諦観が語られていきます。

第2楽章

閉ざされた長い冬の中で深い思索の彷徨が繰り返され、春への憧れが綴られます。

第3楽章

待ちわびた春の到来が喜びをもって歌われます。前の楽章とともに今の時季にとても相応しい音楽です。そう当夜はブラームス日和なのです。

第4楽章

ブラームスならではのハンガリーのジプシー音楽の色彩を帯び、再び諦めが孤独に語られていきます。それをなだめるように優美な旋律が交わされていくのですが、終結部では哀しい決心を告げるように幕を閉じます。


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