九州唯一の常設弦楽四重奏団、34年の活動に幕

 九州にはこれまで2つの常設の弦楽四重奏団がありました。

 一つは私を弦楽四重奏馬鹿にしてくださった岸邉百百雄さん(東京フィルハーモニー交響楽団、ロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団、九州交響楽団コンサートマスターを歴任。元・京都市立芸術大学教授)が主宰された福岡モーツァルト・アンサンブル(1975-1994)。

 そして1986年に創設し、一昨日に400回の演奏会で活動終止符を打った福岡ハイドン弦楽四重奏団です。

 同四重奏団のプロフィールは こちらをご覧ください。

 毎月、平日の12~13時、博多駅前の西日本シティ銀行本店のエントランスホールを会場に、ベートーヴェン、モーツァルト、ハイドンら弦楽四重奏の三巨匠の作品を中心に聴かせてきました。

 とりわけハイドンの弦楽四重奏曲の全曲演奏を日本で最初に果たした功績は大です。

 さらに34年の活動期間と400回の回数は海外でもそうそう見られません。

 室内楽を生業とするのはほぼ不可能である日本で、ここまで活動できたのは四重奏団を後援する福岡文化財団があったからです。

 財団が弦楽四重奏団をレジデンス(専属)としたことも日本では他に例がないのでは?

 しかし福岡モーツァルトアンサンブル同様、地域発の四重奏団を成長させた支援者・聴衆、一方で四重奏団が音楽を深く愛する聴衆を育て、集めたことが何よりの功績と思います。

 日経新聞の取材のために最後の3演奏会全てを聴きました。

 3回には最後を飾るにふさわしい曲が選ばれ、心憎い構成です。

  モーツァルトがハイドンに捧げた6曲集から終曲の「不協和音」。

  ハイドン、ベートーヴェンが最後に完成した四重奏曲。

  未完となったハイドンの四重奏曲作品103

  ベートーヴェンの絶筆となった楽章を最終に配した作品130

 

 平日のお昼開催ですので、この弦楽四重奏団を聴けたのは久しぶりでした。

 意思統一を磨き、それによって「自分たちの四重奏の音」を聴かせるまでに成長していたのです。

 そして最終回のアンコールにモーツァルトの「アヴェ・ベルム・コルプス」が奏でられ、その日の朝の連続テレビ小説「なつぞら」で泣きぬれた私は再び。 

 とは言え、いくつかの課題を残しました。

 この四重奏団や演奏会を知っている方はどれくらいいたでしょうか?

 限られた人しか来場できない曜日・時間帯での実施。

 弦楽四重奏は綿密なリハーサルを日数多く要しますから、毎月実施は演奏の仕上がりには厳しかったはずです。

 などなど。

  奇しくも福岡ハイドン弦楽四重奏団、解散の翌月に、新しい地域発の弦楽四重奏団の船出を直方市で。



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